電子陽電子入射器(LINAC)

電子陽電子入射器(LINAC)は、SuperKEKB加速器の2リングと二つの放射光リング、計4リングに高エネルギーの電子および陽電子ビームを供給するための多目的線形加速器です。

目的・ビジョン
SuperKEKB加速器の二つのリングにはエネルギーが70億電子ボルト(7 GeV)の電子と40億電子ボルト(4 GeV)の陽電子を入射し、二つの放射光リングには25億電子ボルト(2.5 GeV)と65億電子ボルト(6.5 GeV)の電子を入射します。各リングで行われるさまざまな実験が効率的に進められるように、四つのリングにほぼ同時(20ミリ秒間隔)に入射しています。また、SuperKEKBの最終目標性能を達成するために、LINACのビーム性能を飛躍的に高める開発研究を行っています。

概要
SuperKEKBの前身であるKEKB加速器が稼働する前には、LINACはエネルギーが25億ボルト(2.5 GeV)の電子と陽電子をトリスタン加速器と放射光リングに入射していました。その後、KEKB加速器のために電子のエネルギーを80億電子ボルト(8 GeV)に、陽電子のエネルギーを35億電子ボルト(3.5 GeV)に増強し、陽電子数をそれまでの20倍に増やすことになりました。KEKBの完成に先立つこと約1年前の1997年秋に改造を終了し、同年暮れにビーム調整を開始しました。2004年にKEKBの二つのリングへの連続入射(トップアップ入射)を開始して以来、二つの放射光リングへの入射との取り合いが問題となり、また、放射光リングへのトップアップ入射の要望もあって、KEKBの二つのリングと放射光リングの一つへ3リング同時入射する可能性を検討し始めました。エネルギー、粒子の種類、電荷量の大きく異なるビームを一つの線形加速器でほぼ同時に(20ミリ秒間隔で切り替えて)安定して加速し入射することは非常に難しく、世界のどこでも行われていませんでした。しかし数々の改造と研究開発により、その後5年の歳月をかけてついに2009年4月、3リング同時入射が成功しました。この結果、KEKB加速器では性能がさらに向上し、放射光リングではトップアップ運転によって光ビームの安定化がもたらす数々の成果が得られています。

現在では、KEKBより衝突性能を飛躍的に向上させることを目標にアップグレードされたSuperKEKB加速器が稼働し、線型加速器のビーム性能も段階的に改善が進んできました。2019年5月には、四つすべてのリングで同時トップアップ入射を実現し、現在まで安定した入射を実現しています。

 

パンフレット (pdf 7.9MB)

関連するWebページ
SuperKEKB加速器 https://www.kek.jp/ja/research/fa_accl/superkekring/
放射光加速器 https://www.kek.jp/ja/research/fa_accl/lightsource/